人生で1回は食べておきたかった肉を食べた話

先週、“夫の勤務先主催の会に子連れ参加”というビッグイベントに、コミュ障の私も(精神的に)ゲロ吐きながら嫌々参加した。そのご褒美に日曜の半日を自由時間として貰ったので、これ幸いと以前から行きたかったジビエ料理店に行ってきた。以下はそのレポートである。


ところで、ジビエ料理というのもあまりない体験なのでレポでもしようかとウキウキ写真を撮ってきたが、どっこい私は文才が皆無なのであった。ちゃんちゃん。

なのでここからは語彙力の死んでる女がとにかくおいしいおいしいと言うだけのレポだ。得るものは何もない。本当に許してほしい。


〜 登場人物 〜

言い出しっぺ:私→妊娠中ゴールデンカムイにどハマりし、北海道の豊かな大地で育まれる様々な食材に胸躍らせるも、妊娠中のため赤いお肉はちょっと食べられんな…ということでジビエ料理を食べることを産後の楽しみにしていた。今回念願叶ったので気合を入れて髪を切った。

同行者:K →高校時代からの友人。身内ではフッ軽であまりにも有名。今回も「人生で一度くらい未知の肉を食ってみたくないか???」という食人族の誘惑みたいな私のLINEに「食べたーい♡」と即レスしてきた。裏山に死体を埋めに行かないか??と誘っても埋めたーい♡と言ってくれるタイプ。


午後13時、天神のH&M前で待ち合わせた。5分前にやってきたKは花柄のとろふわワンピを着て低い身長でにこにこ微笑んでおり、とてもこれから熊肉をかっ食らおうとしている女には見えない。一方の私は、今から野生動物の肉を食べるんだと思うだけで気が大きくなり、道行く人々がひ弱な草食動物に見える有り様だった。

目当てのジビエ料理店は天神南駅から警固方面に向かって徒歩20分くらい歩いたところにある。福岡にジビエの店は少ない。これだけ位置情報を書けば店名を載せなくてもたぶん伝わる。

それでもホットペッパーに載ってないような話をするなら、路地裏にある上に外観がぱっと見料理屋とわかりにくいことと、あと思ったより内装が今時でしゃれていた。なんせ焼き場の目の前が白木のカウンターだった。もっとマタギの小屋みたいな感じを想定していたので、バチクソ綺麗なカウンターに内心恐れをなしつつ座ると、目の前にメニューが置いてあることに気づいた。


f:id:saya_maru38:20201018215118j:plain

f:id:saya_maru38:20201018215348j:plain


樋熊あるなぁ!!!!!!!!(希少肉なので入荷しないかもと言われていた)


おそらくチェックが入っているところが本日入荷の肉だろう。ゴールデンカムイを読んでからずっと食べてみたかった樋熊があることにわかりやすく興奮する私。ただいきなり樋熊から行くのも趣き(?)がないので、ひとまず鹿・猪・雉のセットを頼んだ。

ヒゲの店主が肉を焼き始めると、香ばしくて食欲をそそるいい匂いがする。コロナ禍で換気もバチバチにしてあるおかげで、カウンター席でも煙で目が痛くなることもない。

そのままKと、“Go toトラベルの期間中にディズニー行くべきか行かないべきか”みたいな話をしていると、最初の一品が届いた。


f:id:saya_maru38:20201018212638j:plain

左:日本鹿のモモ 右:蝦夷鹿のモモ


うわぁ、ついに…といっても鹿だからなんとなくハードルが低い。鹿か、鹿かぁ…金カムでも食べてたな…と思いつつ、まずは右の蝦夷鹿から箸をつける。


う……うっま!!!!!!!!!!

柔らかっ!!!!!!!!なんだこれ!!!!?!?!???!!


めちゃくちゃおいしい。というかすごく柔らかい。個人的に歯科矯正中で歯が数本ないのもあって固いお肉はマジNGなのだが、全然杞憂。超柔らかい。離乳食で出せちゃう。あと脂、なんか甘い…すぐ噛めちゃう…おいしい…テンション上がったまま、隣の日本鹿もいただく。

日本鹿は、蝦夷鹿に比べて弾力がある。そのせいか噛めば噛むほどうまみが滲み出てきて、こっちもすごくおいしい。あと焼き鳥のハツみたいな味がする…とKに言ったら「塩胡椒の味では?」と遠回しに馬鹿扱いされた。


「じゃあKはなんの味だと思う?ちょっと食レポしてよ」

「なんの味かはうまく言えないけど今頭の中に奈良の鹿を思い浮かべながら食べてる」

サイコパスじゃん」


f:id:saya_maru38:20201018222708j:plain

左:雉のささみ 右:猪のロース


猪うっめぇ!!!!!!!!!!!!


脂がサクサクしててこれもむちゃくちゃうまい。あと弾力がすごくて一口大に噛みきれず、丸ごと頬張ると肉汁のガムって感じで最高だった。コンビニで売ってほしい。薬味で山わさびがついてくるのだが、これがまたべらぼうに合う。神シンメ。甘い脂と爽やかな山わさび…ちょっと醤油垂らすともう今後一生肉は猪でいいや…って風情がある。

ここまで連続ヒットしてきたが、雉はなんというか普通だった。普通のささみ。私の感想メモ見直しても「普通!!!!!!」しか書いてない。でも雉はコラーゲン豊富で女性にいいらしいので肌がゴビ砂漠級の私はもうちょっと食べておくべきだった。


f:id:saya_maru38:20201018224520j:plain

左:樋熊 右:真鴨


真鴨は食べた瞬間に2人とも固まった。なんていうかまずくはない…おいしい…だけど何かが今までと違う…協議した結果、“食感がレバーに似ているけど味がレバーじゃないから脳が混乱してる”ということでまとまった。あとここらへんから2人とも語彙力がなさすぎて食べ物を食べ物でたとえる地獄にハマり出していく。


ところで、あれほど楽しみにしていた樋熊だが、結論から言うと“意外と普通”だった。思っていたより固くもなく、思っていたより癖もなく、スーパーで売っていたら当たり前に買うし、焼肉屋でこれが出てきても普通に食べるよね。2人ともそういう感想だった。

なんとなく拍子抜けの感はあったが、正直体験価値の面では「あの樋熊を食ってる…」という点で一番興奮した。今後復職して万が一腹立つ上司にぶち当たっても「いいのか…私は樋熊を食った女だぜ…」と思ったらなんでも乗り切れる気がする。


「あと味といい食感といい、噛み始めてしばらく経ったビーフジャーキーに似てない?」

「似てる似てる。ビーフジャーキーって噛み始めてしばらくするとだんだん柔らかくほぐれてきて、なんか”命を食べてる“って感じ増すよね」

「発想がサイコパスじゃん」


f:id:saya_maru38:20201018224544j:plain

左:兎肉 右:蝦夷鹿の味噌バラ


蝦夷鹿のロースがあまりにもおいしかったので味噌バラも頼んでみた。こっちはバラなのに食感がホルモンっぽい。

兎肉は鶏のせせりに激似。身が引き締まっていてコリコリしている。個人的にせせりが好きなのでこれもおいしかった。あと兎を食べてるという抵抗感については、競馬が好きだけど馬刺しも好きなタイプの女なのであまり考えずにおいしくいただいた。


ここまでで焼き物は〆。追加で、


f:id:saya_maru38:20201018224619j:plain

蝦夷鹿のユッケと、


f:id:saya_maru38:20201018224636j:plain

鹿と猪肉のつくねを頼んだ。どっちも美味。

本当はユッケに卵黄が乗っていて見た目も最高だったが、テンションブチ上がっていた私がゲラゲラ笑いながらかき混ぜた後の写真しかなかった。


2人してお腹いっぱいになったので、ヒゲの店主ともちょっと話してみた。実は福岡は北海道に続いて日本で2番目に害獣被害が多いらしい。でも駆除した害獣のほとんどが産業廃棄物として処理されるだけなんだそうだ。その理由は畜産と違って数が安定しないのと、処理の工程が大変なのと、猟師の数が減っていることと…とにかく色々理由があるらしい。でもせっかく撃ったなら、ゴミとして捨てるんじゃなくおいしくいただきたいよね。鹿や猪は一般に流通している牛や豚より断然カロリーも低いし、タウリンやコラーゲンも豊富。日本古来のスローフードともいえる。だからもっといろんな人にジビエの魅力を知ってほしい。そういう思いでジビエ料理の店をやっていると店主は言う。

私は日本に根付くアニミズム文化(万物を問わず霊魂が宿っているという考え。広義的に、自然を敬い、自然と共生する考え方)が大好きなので、店主の話に感銘を受け、深く頷いたりしていたが、そのころKはおかわりした猪肉を無心で噛んでいた。そのままのKでいてほしい。


帰り道、甘いものも欲しいよねってことでスムージーを買った。


f:id:saya_maru38:20201018232643j:plain


その後は映え〜な飲み物片手に、樋熊の味の話をしながら帰った。皆さんも機会があればぜひ鹿とか熊とか食べてみてほしい。人生で一度くらい、自分のいる国の山奥で、今も人知れず生息している野生動物を食っとくのも乙だと思う。